2017年10月02日23:21
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【映画】「ライフ・イズ・ビューティフル」の感想・解説

ライフイズビューティフル


ライフ・イズ・ビューティフル(ロベルト・ベニーニ,1997年)
※このブログにはネタバレが含まれておりますので注意して下さい。

【予告編】

【あらすじ】

これは、私の物語である

第二次世界大戦前夜の1939年ユダヤ系イタリア人のグイドは、叔父を頼りに友人とともに北イタリアの田舎町にやってきた。陽気な性格の彼は、小学校の教師ドーラに一目惚れし、桁外れなアタックの末に駆落ち同然で結婚して、愛息ジョズエをもうける。

やがて戦時色は次第に濃くなり、ユダヤ人に対する迫害行為が行われる。北イタリアに駐留してきたナチス・ドイツによって、3人は強制収容所に送られてしまう。

母と引き離され不安がるジョズエに対しグイドは嘘をつく。「これはゲームなんだ。泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。いい子にしていれば点数がもらえて、1000点たまったら勝ち。勝ったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」。絶望的な収容所の生活も、グイドの弁術にかかれば楽しいゲームに様変わりし、また、周囲の子供たちと引き離されてしまった父親たちの助けや、「シャワーの日(実際には毒ガスで殺害する日)」にジョズエがシャワーを嫌って父の言うことを聞かずベッドに隠れた運の良さから助かり、ジョズエは希望を失うことなく生き延びることができた。

戦争が終わりナチスが撤退する最中ジョズエとグイドは逃げようとする。しかしドーラを探す最中にグイドは見つかってしまう。ゴミ箱の中に隠れていたジョズエを怖がらせないように、グイドはジョズエにウインクし、背中に銃を突きつけられてもまるで喜劇の主人公のようにジョズエの前を戯けて通りすぎる。グイドは最後の憂さ晴らしにとナチスの兵士にジョズエの見えないところで銃殺されてしまった。 ナチスの撤退後、朝を迎え、誰もいなくなったのを見計らいジョズエがゴミ箱からトボトボと出てくる。すると父が言った通り、砂埃からゲームの「シナリオ」通り「1000点取ったら戦車で家に帰れる」と言うように、収容所に連合軍の戦車が現われ、若い兵士がジョズエを戦車に乗せた。若い兵士がジョズエを抱き抱え自らのヘルメットをかぶせ、お菓子を与えながら外を見ていると、ジョズエは母を見つけ、再会する。何も知らない母に「僕たちはゲームに勝ったよ!」と告げると母はジョズエにキスしながら「そうよ 本当に勝ったのよ」とジョズエを褒め讃えた。 成長したジョズエは父が命を捧げて贈り物をしてくれた、「これが私の物語である」と、物語を終えるのだった。

Wikipediaより

【感想・解説】
人生で一番好きな映画です。
ベニーニ監督は「どんな状況下でも人生は生きるに値するほど美しい」というロシアの革命家トロツキーの信念に感銘を受け、物語を着想したといいます。

主人公・グイドは陽気な性格で,何でもかんでも陽気な嘘をつきまくります。
グイドは一目惚れをしたローラと付き合うために,調査官のフリをして小学校で演説をし,オペラ会場から雨の中彼氏のフリをしてローラを連れ出し友人の赤い布を雨の道に敷く絨毯にしてしまい,ローラの心の鍵を開くと言いつつマリアさんに亭主のフリをして窓から鍵を投げてもらい,博士に出していたなぞなぞの答えを聞くフリをしてローラとアイスを食べるのはすぐだと答えさせ盗んだ帽子を取り返されるのを濡れた帽子を取り替えてくれたように見せかけ,果てにはパフォーマンスのフリをして婚約パーティから彼女を連れ出してしまいます。改めて見ると結構やばいことやってますね笑。でもとても素敵な恋の魔法です。

そしてグイドとローラは結ばれ,ジョズエが生まれます。
時代は次第にグイドらユダヤ人に対して厳しくなってゆきますが,ジョズエに対してグイドはいつもとぼけて見せ,辛そうなところをみじんも見せません。
ジョズエはシャワーが嫌いで,言うことをきかないことに怒るローラから隠れるため箱に入り,隠れているのを知ったグイドが箱の上の花をローラに運ぶ魔法をかけると,ジョズエが箱に入ったまんまローラに運ぶといった,つかの間の平和がありました。このシーンはグイドとローラの「恋の魔法」という過去と,ジョズエのシャワー嫌い・箱に入ってグイドの言いつけ通りローラの元にたどり着くという未来への伏線になっており,2回目に本作品を見たときにこのシーンでうるっときてしまいました。

ある日,グイドとジョズエは強制収容所送りにされてしまいます。
それを知ったローラも,収容所行きの列車に志願して乗り込み,グイドは列車の窓からローラが付いてきてしまったことを知ります。
グイドはジョズエに1000点をとったら戦車がもらえるゲームをしているのだと嘘をつきます。
そして,収容所では仕事の説明から始まりますが,グイドはゲームの嘘がばれないように,自らわかりもしない通訳を志願してゲームのルール説明をしてしまいます

伍長 :聞け。二度は話さん。  
グイド:これからゲームを始める。全員参加できる。
伍長 :お前たちがやるべきことは一つ。
グイド:最初に1000点とった人が勝ちだ。1等賞は本物の戦車だ。  
伍長 :労働だ。
グイド:ついてるな。  
伍長 :破壊行為は死で償ってもらう。背中を打ち抜いて処刑する。  
グイド:点の一番多い人の名前を毎日そこのスピーカーから流す。点の一番少ない人は,「バカ」と書いた布切れを背中の真ん中につけさせる。
伍長 :偉大なるドイツ帝国のために働けることを誇りに思え。
グイド:私たちは大声を出す意地悪な兵隊の役をやる。怖がる人は減点する!  
伍長 : 3つの規則を守れ。1つ、脱走を試みるな。2つ、どんな命令にも背くな。3つ、暴動を起こした物は絞首刑。以上だ。  
グイド:この3つのルール違反をした人は減点する1つ,ちょっとでも泣き出す人。2つ、自分のママに会いたがる人。3つ,お腹が空いておやつを食べたがる人だ、忘れるな!
伍長 :労働を喜びとせよ。規則に従う限り心配は無用だ。
グイド:お腹が空くのでよく減点される人がいる。実は私も昨日40点引かれてしまった。どうしてもジャムパンが食べたかったからだ。  
伍長 :命令は絶対だ。
グイド:アプリコットだった。
伍長 :それからーー 
グイド:(隣の兵隊を指して)ストロベリーが欲しかった。
伍長 :笛がなったら中庭に集合のこと。  
グイド:ペロペロキャンディーは欲しがってもあげない。私たちが全部食べてしまった。  
伍長 :2列になってーー  
グイド:私は昨日は20個食べた。  
伍長 :キビキビとーー 
グイド:でお腹をこわした。  
伍長 :毎朝ーー  
グイド:でも美味しかった。
伍長 :点呼する。
グイド:本当だ。
伍長  :お前たちは向こうで働く。行けば収容所の規模を実感するはずだ。
グイド :早口でしゃべってしまったがかくれんぼをしている真っ最中なんだ。見つかりたくないからもう行く!

僕の大好きなシーンの一つです。説明を聞くジョズエの顔が本当に可愛いんですよね。

収容所では,老人と子供は「シャワーの日」に殺されてしまいます。
ジョズエはシャワー嫌いだったので偶然助かりましたが,グイドはローラがきっと自分たちを心配しているであろうと思います。ある日,通信室が空になっていたので,グイドはジョズエと一緒に収容所の通信をジャックしてしまいます
グイド:ボンジョールノォ!!プリンセス!!
辛い収容生活の中でも,グイドは父としてジョズエを守り,夫としてローラを励まし続けます。
そんな中,グイドはかつてのなぞなぞ友達であったレッシング医師と出会い,レッシングはグイドに「重要な話がある」と告げます。グイドは自分を逃がしてくれるのではないかと喜び,レッシングの話を聞きます。
レッシング:とってもデブで、とっても醜い、黄色で覆われている。さあ私は誰でしょう。で,私は答える。グワッグワッグワッ。歩きながら、粗相する。ポトポト。さて、私はだれでしょう?答えは「アヒル」だろう?いや,違うよ。このなぞかけ,ベニスにいる友人の獣医からなんだ。この答えがわからないと私の次の謎かけを彼に送れないんだ…!
レッシングの話とはただのなぞなぞが解けないという相談でした。うーん,なんという無能
しかも,このなぞなぞの答えは「ない」んですね。ロベルト・ベニーニ監督曰く,強制収容所の悲劇はなんだったのか=何も理由(答え)はなかった,というような狂気を描く表現として,この絶望のどんぞこに陥れるなぞなぞのくだりを入れたのだとか。
このなぞなぞについて,答えが「ユダヤ人」だという解釈もあるようです。製作者側の意図と異なる解釈ではあるものの,ユダヤ人であるグイドがこのなぞなぞを聞いてそういう風に思ってもなんら不思議ではない点で,面白い解釈なのかなと思います。その場合は,グイドは答えに気づきますが,彼らを葬っているレッシング医師は全くユダヤ人の境遇に思い至らないということに失望した,ということになりますね。
ともかくも,グイドは最後の望みを断たれてしまいます。そんなとき,部屋にかつてのオペラのレコードがあり,グイドは窓の外に再生機を向けて勝手に流します。この曲がかつて流れていたとき,グイドはローラに「こっちを向いて」と暗示をかけていましたね。まさにグイドのこのときの気持ち,「寂しさ」と「その中の希望」を表していたのではないかと僕は解釈しています。それを聞いたローラは,グイドの仕業だと勘付き涙しますが,このときローラも長い収容所生活を送って同じ気持ちだったんだと思います。帰り道の霧と音楽の中,グイドはジョズエをだっこしながらこうひとりごちます。
グイド:僕たちずっと夢を見ているんだよ。
このシーンは,過去のローラを思い出しながら必死に自分を支えているんですね。

グイドが起きると,あたりは銃声が響いています。
どうやら戦争が終わり,兵隊はやけになって証拠隠滅も兼ね,被収容者を殺しているようです。
グイドは逃げることを決心しますが,ローラのことが心配です。そこで,ジョズエを箱に隠し,自らは女装してローラを見つけようとしますが,結局兵隊に見つかってしまいます。自分の死期を悟ったグイドは,箱の中からジョズエが自分を見ていることを意識して,最後に精一杯おかしな歩き方で行進し,ジョズエにウインクを送ります。そして,グイドは銃殺され,隠れていたジョズエは戦車に乗ったアメリカ兵に救出され,母親と再開することができました。
ジョズエ:僕たち勝ったんだよ
ローラ :ああ,勝ったのね
もうね,何度見ても泣くわ
もう一度言いますが,人生で一番好きな作品です。
評価:★★★★★(5/5)
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2014-02-05






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Comments(1) ヒューマン  コメディ

この記事へのコメント

1. Posted by おっつ   2018年09月01日 02:27
5 私もこの映画が、一番好きです。
何回見ても涙が出ます。
20年前、デートでこの映画を見て泣きじゃくってしまい、一緒にいた女の子から引かれるくらい感動しました(笑)。
父親の強さ、優しさがたくさん詰まった映画です。こんな考えを持った父親でいたい。
あるシーンを見るとパブロフの犬のように、涙が出て止まりません。

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